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クロマチック入門2


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関東ハーモニカリーグNo.4(1998年10月)〜No.6(1999年4月)に連載

クロマチックに慣れましょう(1)

 ボタン式クロマチックのハ長調(C)の音階練習に慣れましたか。前回は16分音譜でドレミファ・ソラシド・レドシラ・ソファミレとレミファソ・ラシドレ・ミレドシ・ラソファミを練習しました。継続的な練習としては、ミから始める、ファから始める、ソから、ラから、シからというように最初の音を任意の音から始められるようにします。また、3連譜を使ったドレミ・ファソラ・シドレ・ミレド・シラソ・ファミレでも同じように初めの音を任意の音から始められるようにしましょう。
 これらを十分練習すると同時に、きっといろいろな曲の練習をなさっていると思います。これらのハ長調の音階練習ではボタンを1度も使いませんでしたね。せっかくボタン式クロマチックを練習しているのですから、#やbの練習もしたいものです。
 当面は、イ短調(Am)の曲で出てくる#ソの音でボタンを押すことが多いと思います。これは、臨時記号としての#ですね。
 次に調子記号としての#やbに慣れるようにします。いきなり#やbがたくさんついた曲は難しいので、最初はト長調(G)の曲を選びましょう。ここでは、5線譜をそのまま読むようにします。数字譜に直してはいけません。
 5線譜の読み方は、固定ド方式で読みます。昔、音楽の授業で移動ド方式を習った方々がいらっしゃるかも知れません。移動ド方式では、ト長調だと第2線をドと思って読むわけですね。しかし、固定ド方式だと、調子記号に関わらず、下第1線をドと読み続けます。最近はリコーダや鍵盤ハーモニカを教えるので、音楽の授業でも固定ド方式で習うのだそうです。私たちは小学校で移動ドで、高校で固定ドを学びました。世代がばれますね。
 ト長調では、第5線に調子記号としての#がついています。それで、曲の中に現れるファの音をすべてボタンを押して吸うことになります。臨時記号ではないので、#が直接書かれていないのですが、それを#がついているものと頭の中で認識して演奏します。ここが大事なのです。数字譜に直してしまうと、つい#4のように臨時記号であるかのように書いてしまいます。
 臨時記号でなくて、調子記号の場合には、あくまで頭の中で処理しなければなりません。これから#やbの数が増えていくと共に、この頭の中での処理が増えていくので、ト長調あたりの練習からも絶対5線譜のまま曲を読み取るようにします。
 さて、初心者のころは、第5線の#も臨時記号のように扱ってしまいがちです。というのも、ついついドレミ#ファソラシドとハ長調の音階の中でファに#がついていると捉えてしまうからです。それでも曲は吹けてしまうのですが、正しくはソラシドレミ#ファソというト長調の音階だと捉えなければいけないのです。
 私が学生だった頃を思い出すと、1年半から2年くらいは調子記号をハ長調の臨時記号として捉えたまま吹いていたように思います。つまり、。Ebの曲ではドレbミファソbラbシドのようにミとラとシにbがつくと思って吹いてしまうのです。これも正しくは、bミファソbラbシドレbミというように変ホ長調(Eb)の音階として捉えなければならなかったのです。
 どのように捉えようとも、ト長調の曲は#ファをボタンを押して吸うことにより演奏できてしまいますが、ト長調の音階練習をする場合にはソラシド・レミ#ファソ・ラソ#ファミ・レドシラから練習しましょう。慣れるにつれて、始まりの音を変えていきます。無意識的にファの場所でボタンが押せるようになればト長調もマスターですね。しばらくト長調の曲ばかりを選んで本譜に慣れてください。同じ#1個の調子記号でも、短調であればホ短調(Em)の曲です。このときは、臨時記号としての#レの音がよく出てくることでしょう。

クロマチックび慣れましょう(2)

 さて、調子記号が# 1個のト長調またはホ短調の曲が吹けるようになりましたか。
 次の段階では、へ長調(F)に挑戦します。この調では第3線にbがつきます。したがって、bシになります。音階はファソラbシドレミファです。音階練習は、ファソラbシ・ドレミファ・ソファミレ・ドbシラソですね。
 ここで注意しなければ行けないのは、bシの音の位置は、#ラの位置だということです。単純にボタンを押して吸うだけでなく、吸う位置をラの位置に移動させなければなりません。これが無意識にできるように、何度も音階練習をしましょう。また、ヘ長調の曲を選んでいろいろな曲を演奏しましょう。
 さらに進んで、次は変ロ長調(Bb)に挑戦しましょう。第3線と第4間にbがついて、bシとbミになります。音階はbシドレbミファソラbシです。音階練習はbシドレbミ・ファソラbシ・ドbシラソ・ファbミレドです。
 さあ、今度はbミの音が出てきました。bミの位置は、#レに当たります。ボタンを押して位置をレの位置に移動させるだけでなく、今度はミの音を本譜上で見ながら吸う動作をしなければなりません。複音ハーモニカで長年吹いてきた人にとっては、ミというのは吹く音に決まっています。それを吸わなければいけなくなるので、混乱が生じます。でも、ここでめげてはいけないのです。bは、後々説明する予定ですが、ハーモニカを演奏しやすくする働きがあります。クロマチック・ハーモニカ奏者は絶対bがたくさんつく曲をマスターしなければなりません。
 さて、bミの音を出すに当たって、演奏者によってその捉え方が違うという話をしましょう。捉え方には、次の3種類があるようです。
 (1) bミを#レに読み替えて#レと思いながら吸う。
 (2) bミは吸う音だと理解して、bミと思いながら吸う。
 (3) bミを、特に#レだbミだと意識することなく、吸う。
 私自身は、(1)の方法を使っていて、それが当たり前だと思ってきました。ところがいろいろな人と会話していると、どうも(2)の人も(3)の人もいるのです。
 (2)の方法は、バス・ハーモニカやホルン・ハーモニカも吹く人でした。なるほどなあと感心しました。しかし、自分がいまさら(2)に変わるなんて考えられません。(実は、私がバスやホルンを吹くときも、bミを#レに読み替えるという癖があります。)
 (3)の方法は、プロのプレイヤーでした。私は、思わずこの人は天才だと思いました。すごいの一言です。
 ハーモニカだけでなく、別の楽器も演奏する人も多いので、どんな方法がよいのかは決められません。(3)ができれば一番よいと思いますが、複音を吹いてきた人には中々難しいのではないでしょうか。私自身は(1)ですが、頭の中でbミを「ルレ」のようにレとは違う発音を使って読んでいるようです。大事なことは、自分なりの方法を早く見つけてそれで通すことです。まよっていろいろ変えるのはよくありません。
 ということで、当分の間、変ロ長調の曲を探して演奏してみてください。たくさん、たくさん演奏することと、合間に変ロ長調の音階練習を入れましょう。短調の場合はト短調(Gm)です。臨時記号として#ファがよく出てくるでしょう。
 この調子に慣れると、演奏が楽なことに気付くかも知れません。レとbミが共に吸う音になるため、ボタン操作だけで進められるので滑らかさが出てきます。これが#が2つの曲だと、ボタン操作と共に吹き吸いも変えなければいけないので、かなり練習をしないと滑らかさが出るようになりません。#2つの曲、ニ長調(D)またはロ短調(Bm)は、熟練者にとっても難曲となります。むしろ#が4個の方がやさしいのです。

クロマチックに慣れましょう(3)

 さあ、#が1個、bが1個、あるいはbが2個の曲が吹けるようになりましたね。
 それでは、次はbが3個の曲について勉強しましょう。bが3個の音階では、bが2個に比べて、bラが出てくるところが違います。音階はbミファソbラbシドレbミですね。
 という調子で続けると、12の調子すべてについて、延々と説明しなければなりません。ここは、それぞれの調子については自分で音階を把握しながら、練習してくださいねと冷たく言って済ませましょう。
 実際、すべての調子の音階練習をまじめになさっている方は、ハーモニカ界では非常に少ないのではないかと思っています。私自身、クロマチックを手にして25年も経過して、ようやく一念発起して音階練習をやり直し、なんとかできるようになったというのが実状です。しかし、できるようになって、あらためて考え直してみると、すごく上達したなぁという実感があります。いろいろな楽譜を読むのがすごく楽になりましたし、曲の途中で転調しても混乱しなくなりました。これからクロマチックを演奏する方には、私のように25年も放っておくのではなく、早い時期から楽譜を見ることなしに12音階のすべてを練習できるようになってほしいと思います。
 私の次の目標は、簡単な曲を、12の調子のどれにでも簡単に頭の中で転調して吹けるようになることです。試してはいるのですが、連続した音のつながりは結構うまく行っても、跳躍音ではよく間違えます。まだまだ基礎練習が足りないのだなと自覚しています。
 さて、音階練習は、他の楽器の演奏者であれば、間違いなく初期の頃から訓練すると思います。ピアノ、フルート、クラリネット、ギターなど、どんなポピュラーな楽器でも教則本の最初の方にはかならず音階練習があります。先生からもかならず訓練されるはずです。
 ハーモニカもそうでなくてはならないのです。楽器練習の最終目標は、オーケストラの一員のように、出された楽譜を初見で楽に演奏できるようになることだと思います。しかし、ハーモニカ界では、曲の練習の方に力が入っていて、音階練習はなおざりにされがちです。クロマチックは、ボタン操作で半音が出せる立派な楽器ですから、普通の楽器と同じように、まじめに音階練習をやって、いろいろな楽譜を初見で演奏できるようになるように心がけましょう。
 さて、ハーモニカではbの場合は、吹き吸いの関係が逆転する(bレ、bミ、bソ、bラなど)ので、複音の吹き吸いに慣れた人には、楽譜自体が非常に読みにくいということがいえます。しかし、前回bが2個のところで述べたように、演奏自体は楽になります。
 楽になる理由の1つは、前回も述べたように、吹き吸いを変えることなくボタン操作だけで、音階上の次の音が出せるため、早い曲でも楽に吹けるようになるからです。
 もう1つは、替え手が利用できるからです。たとえばbが4つの曲(Ab、Fm)ですと、ファの代わりに#ミ、ドの代わりに#シが使えるので、bラ,bシ、#シ、bレ、bミ、#ミ、ソ、bラ(全部#で書くと#ソ、#ラ、#シ、#ド、#レ、#ミ、ソ、#ソ)になって、ほとんど全部ボタンを押したまま演奏できてしまうのです。
 このように、替え手が利用できる部分を、bが多い曲の場合によく研究して演奏すると、ボタン操作がかなり少なくなります。bが3個や4個の曲で自分なりに研究してみましょう。
 また、ボタンを押す音では、ボタン操作を少しずらした装飾音を付けやすくもなります。この装飾音は、ポピュラーやジャズの曲を吹くときにとってもハーモニカらしい効果を出すことができますので、クロマチックの奏者にはぜひマスターしてほしいテクニックです。
 みなさん、b を研究しましょう。

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