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複音奏者のためのクロマチック入門(7)



スロート・ビブラート
 スロートというのは喉のことです。スロート・ビブラートでは喉の震えを利用します。
 ウッ、ウッ、ウッ、ウッ、ウッという感じで喉で息を切るようにすると、滑らかでない、かすれたようなビブラートがかかります。息を切るといっても本当に切ると音が途切れてしまいますから程度問題なのですが、色々工夫してみてください。これまた、西部劇の映画で流れるようなとてもハーモニカらしいビブラートが得られます。日本の曲でしたら、「時には母のない子のように」などがこの吹き方にぴったりだと思います。
 次に示すのは、「時には母のない子のように」の前奏部分です。森本恵夫先生のクロマチック・ハーモニカの音色は素晴しかったですね。bが2個のGm調の曲です。B音とE音にフラットが付き、それぞれBb音とEb音になりますが、前奏ではBb音しか出てきませんので、簡単に吹けると思います。


 喉の動きをより滑らかにし、口腔内の空間を大きくとるような吹き方をすると、レオ・ダイアモンド(故人)さんやリチャード・ヘイマンさんのような柔らかい音を作ることができます。かってベスト・セラーになったヘイマンさんの「Ruby」にその音を聞くことができます。(ただし、ここまで到達するのはとても難しいことです、念のため。)

横隔膜ビブラート
 横隔膜を振るわせるビブラートは、フルート奏者や声楽の方が使うビブラートです。ハーモニカの場合には吹くばかりでなく吸う場合もありますので、より難しく感じられるかもしれません。
 カラオケで歌う場合にビブラートがかかっている人は、多分横隔膜が動いているのだと思います。私はカラオケがまったくできないのでそのあたりの事情が詳しくないのですが、もしビブラートがかかる方でしたら、クロマチックを吹くときにその感覚をハーモニカにぶつけてみてください。きっと自然なきれいなビブラートがかかることと思います。
 そうでない人は横隔膜を動かす訓練をしなければなりません。コツは、ウーウーウーウーと強弱をつけて吹く(吸う)のです。><><><>とディクレッシェンドとクレッシェンドがロング・トーンの中で繰り返される感じです。この振幅の幅は、フルート奏者のビブラートを参考にするとよいのですが、最初は中々そのような速さにはなりません。遅くから始めて、だんだん速くなるように訓練していきましょう。
 スローな曲で、1四分音符あたり4回の振幅が入るようになると完成といってよいでしょう。このビブラートも動きの速い部分では付ける必要はなく、音を伸ばすロング・トーンの部分でつければ十分です。
 お手本はクロード・ガーデンさんです。また、練習曲としてガーデンさんのお薦めはシューベルトの「アベ・マリア」です。読みにくいかもしれませんが、とてもゆっくりした曲なので演奏は楽です。
  
 このビブラートは、振幅の大きさを変えることによってかなりの変化が出ます。振幅の速さは同じでも、振幅を大きくするとかなり大げさな、オペラ歌手的なビブラートになりましょう。また振幅を小さくすれば自然なほのぼのとしたビブラートになるでしょう。これらを曲により、あるいは曲の部分部分で使い分けることにより、色々な変化を醸し出すことができます。トゥーツ・シールマンスさんは、振幅の小さい自然なビブラートを使っているように思われます。
 横隔膜ビブラートができるようになってから、口笛を吹いたり、リコーダを吹いたりするときに応用すると、実にいい感じの音色が作れることに気付きました。映画で流れる口笛はとても綺麗ですが、横隔膜ビブラートが鍵だったのですね。



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