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複音奏者のためのクロマチック入門(4)


東京クロマチックソサイェティ会誌第14号(2002年3月1日)に掲載された記事です。

5線譜に慣れましょう

 5線譜が読めるようになるには、5線譜に慣れる必要があります。私達が学生バンドに入った時は、#やbが1つ程度の易しい曲もありましたが、「マンボNo.5」なんていう曲はbが4つでした。必死に「bミ」は「#レ」だ、「bラ」は「#ソ」だなどと頭の中で変換して6月の四大学演奏会に臨んだものでした。しかし、曲数が限られているので、何度も練習するうちには曲自体を覚えてしまうので、それほど5線譜に慣れたとは言えません。
 圧巻は夏の合宿でした。1週間の期間の間に20曲以上の新曲が配られます。これらを次から次へとこなすうちに自然に読譜力が養成されたのだと思われます。

たくさんの楽譜を読みましょう

 これらの経験からいえることは、まず、たくさんの楽譜を読みましょうということです。ある1曲を何度も何度も練習しても、読譜力は養われません。何回か練習するうちに、曲を覚えてしまうからです。その曲は上手になるかもしれませんが、次の曲の新譜でまた読むのに苦労することになります。調子記号のない曲から、bが1個から6個まで、#が1個から7個までのいろいろな調子をこなしましょう。このときは、その曲だけではなくまずその調子の音階練習から始めるのが効果的です。
 なお、#が7個の調子(C#)は実はbが5個の調子(Db)と等しいのですが、ハーモニカの場合、吹き吸いの関係から#が7個として書かれる場合も多いのです。でもその場合はスライド・ボタンをずっと押したままですから、演奏的にはハ長調と変わりませんね。でも、同じことをbが5個で書かれる場合もあるので、その読み方も練習しておかなければなりません。クロマチックでは、Db(またはC#)の曲は鋭い装飾音をどの音でも付けられるとてもありがたい調子なので、歴代の名奏者達の演奏には必ずこの調子が出てきます。頑張って練習しましょう。
 #が6個(B)はまた#が6個(Cb)の調子でもあります。これらの調子も当初はよみづらくてつらい調子ですが、よく考えてみるとほとんどボタンを押したままで吹き、ミとシだけボタンをはなしてナチュラルにすればよいことに気付きます。そうすると、演奏的にはbが2個のBb調の曲とあまり変わらないことになります。Bb調はクロマチックではとても吹きやすい調子ですので、B調もそれに劣らず吹きやすいのです。このように、各調子でよく考えながら吹くと、段々苦手な調子が減っていくことでしょう。
 そういう意味では、#が4個、3個、2個、また意外ですが1個の調子も演奏的には難しい調子です。これはボタンを押す動作と吹き吸いを切りかえる呼吸法の変化がしょっちゅう現れて、中々指の動作と呼吸が一致しにくいからです。#が1個の場合でも、音階進行の中にミと#ファ、#ファとソなどが出てくるので、早い曲を演奏するときにはとても難しく感じます。

振りがなは止めましょう

 楽譜を渡すと、調子記号の音に振りがなを振ってしまう方、あるいはボタンを押す音に丸を書いてしまう方がよくいます。これはぜひ止めたいものです。
 調子記号は最初に書いてあり、それらを頭の中で処理できるようになりましょう。そのためには、先生から新譜をもらっても振りがなを振ってはいけません。振ってしまうと、頭の中で処理するという脳の学習能力を奪ってしまい、折角読譜力が付く機会を失ってしまうのです。
 短期的には、先生の前で早く上手に吹くという効果があるでしょうが、長期的には自分の上達能力にはマイナスなのです。いつまでたっても先生から自立できなくなってしまいます。(もっとも、先生の経済的にはいいのかもしれませんね。)
 大衆小説ってすべての漢字にルビが振ってありますね。私はあるときどんな読み方をしているのだろうと思って、自分の読み方を観察しながら大衆小説を読んでみました。すると、驚いたことに漢字を読まないでルビの方を読んでいたのです。ということは、大衆小説をいくら読んでも漢字の読み方は上達しないということです。
 同様に、振りがなを振った楽譜をいくら読んでも、読譜力は上達しないのではないかと思っている次第です。

マウスピースに印は付けない方が・・・

 振りがなと似たようなことですが、ハーモニカのドの位置に塗料を塗って目印にしている方がたくさんいます。演奏会や先生の前で最初の音を出す時に間違えたら困るからなのでしょうが、これも印を付けてしまうと、感でその位置に持って行く能力を養成することを阻害します。
 元々、1 2 3 ・・・ 12 などの数字がカバーに刻印されているのですから、なるべくそれだけで位置がわかるようになることも上級奏者への1歩といえましょう。
 バイオリンには印は付いていませんし、ギターも高級器にはフレットに記号が付いていないそうです。私が最近入手した金色クロマチックには数字の刻印がありません。まだ少し不安ですが、今はそれに慣れようと努力している最中です。


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