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複音奏者のためのクロマチック入門1

 

東京クロマチックソサイェティ会誌第10号(2001年3月1日)に掲載された記事です。一部、クロマチック入門の記事と内容が重複する部分があります。
ハーモニカマガジンVol.1(2002年3月発行)にも掲載されました。

何はともあれ音階練習


 複音奏者がまず最初に気づくのは、ハーモニカの動きの違いです。低音部、高音部に折角慣れた人に悪いのですが、クロマチックでは、ドとレ、ミとファ、ソとラ、シとドのように吹く音と吸う音が一つの穴で吹けるのです。これは、複音ハーモニカとまったく違う動きで、戸惑います。しかし、クロマチックではどのオクターブでもすべて同じ配列であるという大きなメリットがあります。特に合奏の場合、低音部を吹く人にとっては便利なことこの上もありません。
 そこでプラス思考でとにかくそれに慣れるということが大切です。これまでの習慣では、無意識にドとレでハーモニカを動かしてしまいます。これを無意識で動かなくなるようにするには、とにかく音階練習です。ドレミファ・ソラシド・レドシラ・ソファミレというのを繰り返し繰り返し吹くことにします。無意識にできなくてはならないので、遅く吹いては意味がありません。これらを16分音譜として吹くと丁度1小節分ですので、リズムを狂わせないように吹き続けます。
 飽きると、レミファソ・ラシドレ・ミレドシ・ラソファミで同じことをやります。初めがドかレかでは、ハーモニカの動きが違うので、このように初めの音を変えて吹くことはとっても重要です。
 これができたら、今度はドレミ・ファソラ・シドレ・ミレド・シラソ・ファミレを3連譜で1小節分として吹きます。これも16分音譜の動きとまったく感じの違った動きになりますので、重要な練習です。これができたら、そうです。最初の音を変えるのです。今度はレから始めてみましょう。
 「クロマチックを吹いても、どうしても各音でハーモニカが動いてしまって。」という感想を聞くことがよくありますが、このような音階練習が不足していると思われます。クロマチックでどんな調子でも吹けるようにするためには、12音階の長調、短調などもやる必要がありますが、それは熟練者の話です。初心者はとりあえずハ調の音階でとにかく無意識にできるようになるよう心がけましょう。

ハーモニカが壊れてる?

 次の課題は、低音域と高音域のマスターです。クロマチックを始めると、12穴の1番のレまたは2番のファが吹きにくいと感じる方、一番高音域のオクターブが吹きにくいと感じる方がよくいます。時には、楽器屋さんにクロマチックが壊れているとクレームをつけることもあるとか。これは、ハーモニカのどの部分も同じ吹き方をしてしまうために起こる現象です。実は、低音、中音、高音ではそれぞれ吹き方がすこしずつ違うのです。中音は吹きやすいので、どんな口の形でもそれなりに音は出ますが、低音、高音は正しい口の形、腹式呼吸、強弱の加減などが要求されます。
 低音は、なるべく口腔の空間を大きくして、「オ」の形で吹きます。腹式呼吸で、横隔膜からの息を加工しないようにして吹き吸いします。口の中で、息の流れを変えるような吹き方をすると、10ホールズのベンド音みたいな効果が出て、音程が狂います。
 中音でも音程が下がる人は、口の中で息の流れを変えない吹き方にしてみましょう。
 高音は、出にくいと感じて強く吹く人がいます。これは逆効果です。「押してだめなら引いてみな」です。少しゆるめて軽い吹き方をしてみましょう。高音は小さな音でも十分響きますので、強く吹く必要はありません。マイクでも高音はよく拾われるので、イコライザーで押さえているほどですから、弱く吹いていいのです。
 これらを先の音階練習の中で、各オクターブについてやはり無意識にできるようになるまで繰り返し練習します。
 曲を吹くときは、曲想に十分な意識を払うべきで、音の出し方を考えているようではよい演奏になりません。したがって、ハーモニカの動きと音出しを無意識のうちにできるようになるまで繰り返し練習すること、これがクロマチックを始めるに当たっての最重要課題です。これまで述べたのは、要するにドレミファですから、むずかしいことを言っているのではありません。誰でもできます。しかし、単調な作業なので飽きてしまうのでしょうか、継続してやっている人はあまりいません。そこをがんばれば、きっと中級、上級への道が拓けることをお約束します。

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 さて、初心者から中級に進むに当たっては、よいテクニックとよい楽譜が必要になります。これについては、日本ハーモニカ芸術協会第189回実験工房で「巨匠たちに学ぶハーモニカ・テクニック」と題して紹介しました。ビデオ・テープと楽譜が入手できますので、日本ハーモニカ芸術協会事務局長 岸田(TEL、FAX:045-413-1160)までお問い合わせください。ただし、これらは相当高度なテクニックを駆使しています。

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