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アジアのハーモニカ事情

 


関東ハーモニカリーグ2006年秋号に掲載された記事です。

クロマチック・ハーモニカ愛好家 真田正二

 第6回アジア太平洋ハーモニカ大会に参加してきました。規模は年々大きくなって、ドイツのトロッシンゲンで開かれる世界大会よりも大きな大会に育ってきました。どなたかがいみじくもおっしゃっていますが、ヨーロッパ人はアジア人が参加していなくても勝手に世界大会と言っているのだから、こちらもアジア大会みたいな言い方ではなくて世界大会と言ってしまえばよいという言葉に賛同したくなってしまいます。レベルの方もアジア勢がどんどんアップしてきており、日本の地位もかなり危うい情況です。

 そんな退会で見聞きしたことをいくつか取り上げてみたいと思います。

複音で熊蜂の飛行

 会場の建物内ではさまざまな国の若者達が本番に備えて練習しています。そこでとても印象的だったのが、複音ハーモニカ2本でリムスキー・コルサコフの「熊蜂の飛行」の半音階進行部分を練習しているのを見かけたことです。ん、速い。私がクロマチックで練習するのとほとんど変わらない速さではありませんか。やるもんだわいと感心しましたが、つい最近自分なりに複音ハーモニカ2本で試したところ、全くできないことがわかりました。今、改めて思う、「速い!」。

アンサンブルの第1ハーモニカ

 アンサンブルのコンテストを見ていましたが、クロマチック・ハーモニカでクラシックを取り上げるバンドが多かったです。で、大抵聞かせ所となるような細かいフレーズが数箇所出てきますが、そこで第1ハーモニカがソロで軽々とやってのけるのには驚きました。バンドのメンバー全員がそれほどの技量を持っているとまでは思いませんが、どのバンドにも一人はそういう奏者がいるのです。クロマチックを主体としたアンサンブルが少ない日本ではなかなかお目にかからない光景でした。

ホルン重視

 香港のKing’s Harmonica Quintetの重厚な演奏は厚木大会を皮切りに、香港大会、そして台湾大会でもお目にかかりました。ハーモニカのクラシック風オリジナル現代曲に取り組んでいるバンドです。そこではホルン・ハーモニカ・パートが大活躍します。バス・ホルン、アルト・ホルンが低音を担当しています。ソプラノ・ホルンについては定かではありません。日本の大学のバンドでもホルンは使っていますが、クラシック系の演奏はあまりやらないので、こんな使い方はとても新鮮です。多分、大合奏のバンドにもたくさんのホルン奏者がいるように見受けられました。

 たまたまオープン・ステージの私の演奏の後の時間が香港の人達で、最初にピアノ伴奏によるバス・ホルン・ソロ、次がピアノ伴奏によるホルン4重奏で、どちらもクラシック曲でした。日本ではシルキートーンズがホルン主体で演奏していましたけれど、他には例を見ないようです。

トリオのレパートリー

 トリオ以外のアンサンブルのコンテストはあまり見ませんでしたが、トリオの決勝はすべて見ておりました。みんな若さがあります。これだけたくさんのトリオが互いを刺激しあいながら練習をかさねているのですねえ。以前の日本も若い素晴らしいトリオがいたものでしたが。

 特徴的なのは、イスラエルの曲がとても多かったことです。しかも演奏はみんな上手。これは厚木大会や香港事前大会などでのアドラー・トリオの影響だと思われます。おお、これもやるのか、ええっ、これもという具合によくレパートリーとして取り込んでいると思いました。日本ではそんな現象見えないですねえ。残念です。

周辺ビジネス

 ちょっと面白かったのは、ハーモニカのパーツを製造販売するビジネスが立ち上がっていたことです。一つはホルン用ボディを紫檀、黒檀、その他の木で作ったものを売っていたこと。ホルンが盛んなアジア諸国で成立するビジネスといえましょう。

 もう一つはSUZUKIのコード・ハーモニカ用のアルミ製ボディ。オリジナルはプラスチック製でネジ留めですから簡単に置き換えが効くのでしょう。ちょっと値段を聞いて驚いたのですが、11万円位なのですね。定価よりも3万円ばかりも高いのです。

 総じてアジア諸国のハーモニカ演奏技術の高さに驚いた今大会でしたが、日本勢も一般クロマチック・ソロ部門で一位、二位を独占しております。ただ、アンサンブル部門ではもっと若い人達がたくさん台頭してこないと、今後アジア諸国と対等に渡り合うには辛いなあと感じたことでした。



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