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クロード・ガーデンさんの音色

 


ハーモニカマガジンVol.14(2005年夏号)に掲載された記事です。


クロマチック・ハーモニカ愛好家 真田正二

クロマチック・ハーモニカは複音ハーモニカと違い自動的なビブラートがかかりません。ですから大方の楽器と同様、演奏者が物理的にビブラートをかけてやる必要があります。クロマチック・ハーモニカの全盛期は多分私がクロマチック・ハーモニカに出会うより前のアメリカにあったのではないかと思います。私が大学のハーモニカ・ソサイアティに入部した頃には、色々な奏者のLPをすでに先輩が集めていて、よく聞かせてもらいました。ところが、クロマチック・ハーモニカというのは口と発音部が他の楽器よりずっと近いためか、奏者によってまったく音色が異なるのです。しばらく聞くと、すぐどの奏者の音色なのか判別がつきます。代表的なのはレオ・ダイアモンド、リチャード・ヘイマン、トミー・モーガン、エディ・マンソン、ジェリー・ムラッド、ラリー・アドラー、そしてクロード・ガーデンでした。(その頃はまだトゥーツ・シールマンスは知りませんでした。)

 その頃からクロマチック・ハーモニカというのは自分の音作りがとても大切なのだということを諸先輩から何度も聞かされました。色々なレコードを鑑賞する中で、自分なりに好きな奏者が決まってきました。どの方も素晴らしい音色です。ところが、ハーモニカばかりなので大抵の奏者のレコードを1枚通して聴くと飽きてしまうのです。レオ・ダイアモンドなんかどう逆立ちしても出せないような絶妙なビブラートなのです。ですが、どの曲もその音色で通されると次第に飽き飽きして、そのうちあまり録音を聞かなくなってしまいました。

 そんな中で飽きさせない一枚がクロード・ガーデンさんの「夜のハーモニカ・ブルース」という国内盤のアルバムでした。収録曲は「グリスビーのブルース」、「ホテル・ハピネス」、「心の傷あとのブルース」、「静かなる胸に」、「グリーン・スリーブス」、「キャラバン」、「太陽はひとりぼっち」、など12曲でした。彼の場合、音色は同じ調子で続くのではなくて、フレーズごとにどんどん変化するのです。色々なテクニックもたくさんちりばめられています。しかも大事なのは、それがフランス流なのか、とてもしゃれているのです。

このアルバムのほとんどは音採りして練習するのにも適当でした。8曲位は採譜して練習しました。それが実は彼と友達になる上でとても役に立ったのです。彼の2番目の来日のとき、全日本ハーモニカ連盟のパーティで彼にその楽譜を見せたところとても喜んでくれて、以降、出会うたびにビブラート、マンドリン奏法などを気さくに教えてくれる仲になりました。現在の私のビブラートは彼に教えてもらわなければ決して手に入らなかったことでしょう。2004年の香港大会のときは彼独特のハンド・カバー奏法も教えてもらい、すでに何度か試しました。それなのに、・・・、その数ヵ月後にわずか67歳の若さで逝ってしまわれたのです。もっともっと教えてほしいことがたくさんあったのに、返す返すも残念でたまりません。




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