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クロマチック実践3



未発表

目次
足の踏み方
休符を数える


足の踏み方

 舞台の上でリズムを取るのに足を踏んでいるとみっともない、とか、クラシックで足を踏むのはよくないなどの話題がありますが、何、クラシックのバイオリン・ソロ奏者だってしっかりと体重移動や膝の屈伸などでリズムを取りながら演奏しているのです。本番では床に足を打ち付けますとマイクに響いたりするので、それなりの配慮をする必要がありますが、リズムを取ること自体は演奏する上でとても大切なことです。

 今回これを話題にしたのは、そもそもリズムを取る足を踏むことすらできない方がいらっしゃることに気が付いたからです。それでどうやったら足が踏めるのかといったことについて自分が実践している方法を説明してみます。いろいろなやりかたの人がいると思いますので、別の方は別の方法で実践されていることでしょう。そういった意味では絶対的な方法ではありませんので、参考程度にお読みください。

 大方の人は、行進曲タイプの曲でしたら足が踏めるはずです。そもそもそのために作曲されたようなものですから。ところが、最近の流行歌などはシンコペーションが多用されています。するととたんに足を踏むことができなくなるのです。当然、リズムを取れないので、合奏はバラバラになってしまいます。

 例で示しましょう。次のは、シンコペーションのリズム練習曲の一部です。

 最初の出だしの音は1拍目ですので、誰も足を踏むのに混乱する人はいません。ところがそれ以降の音は、すべて足が上がっているときに音を出す必要があります。人間、誰しも音を出すタイミングと足を下ろすタイミングが同じであれば混乱しないのですが、いかんせん、シンコペーションの場合にはそれが一致しないので困ってしまうのです。

 そこで私の実践方法を説明してみましょう。

 説明のために楽譜を下のように書き替えます。(演奏のために書き替えたりはしていません、あくまで説明用です。)


この楽譜を階名で8分音符ごとに次のように読み下します。

  ドレエミイファアソオラアシドオンン

 このように、音が伸びているところは例えば「レー」と読むのではなくて「レエ」とわざわざ母音を使って読み下します。頭の中で「エ」と思うだけで、ハーモニカの音としては単に伸びているだけだということに注意してください。そしてこの母音のタイミングが実は足を踏み下ろすタイミングなのです。

 早速やってみましょう。

  ファ

  どうでしょう、足を踏み下ろすタイミングを太字で表しました。まずはハーモニカを持たずに、口で言ってみましょう。何度もやって慣れてきたら、ハーモニカでやってみましょう。母音のときに音を出し直したりしないようによく注意してくださいね。 さて、次の課題は、スゥイングとの関係です。シンコペーションはジャズなどのスゥイングしている曲のときに特によく使われます。こちらも母音で読み下す方法は同じで、ただ8分音符で跳ねて吹けばよいだけです。先ほどと同様に書き下しますと、

  ドッエッイッファアッオッアッ

となります。 幸い、母音の時に足を踏み下ろすことには変わりありません。まず口で練習して、さあ、ハーモニカでやってみてください。

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休符を数える

 合奏においてはメロディだけでなくオブリガートを担当することが多くなります。特に2ndパートを担当するとオブリガートを吹くことが多くなります オブリガートの場合には音を出すタイミングがメロディ・パートと同じとは限りません。何小節か休んだ後で音を出す、それも、小節の頭からではなくて2 拍目とか3拍目から入るといったこともよくあります。

 そうした場合に、新曲の練習開始時には、ちょうどよいタイミングで音を出せないという例をよく見かけます。練習に練習を重ねればそのような現象は減っていくのですが、新曲が入ると元の木阿弥になってしまいます。

 なぜそうなるのかということを想像してみると、休符をしっかり数えていないのではないかということに思い当たります。つまり休符というのは数える対象ではなくて、音を出さなくてよい「休み」だと思ってしまう。前の音出しが終わって休符が続いているのを見ると、やれやれと安心して休んでしまう。その結果、今何拍目の演奏が行われているかわからなくなってしまって、次に音を出すタイミングがわかなくなってしまう。

 休符というのは「符」という字がついているだけあって、楽譜を形成する重要な構成要素なのです。したがって、音符同様、その数をいつもしっかり数えていなければなりません。音出しが終わったとたんに休符が示している休みの長さを頭の中で数える、これがとても大切なのです。

 私はアマチュア・オーケストラに所属していますが、そこでは色んな楽器があるために、それぞれの楽器は音楽全体の中で一部しか音出しを担当しません。極端な場合、ボーカルが入る曲であると曲の9 割方が休みで、エンディングにだけちょこっと音を出すという例もあります。練習を繰り返せれば雰囲気はわかってきますが、歌手が参加するのは本番のリハーサルのときだけなどということもあって、普段はほとんど練習で取り上げられないので、演奏するときはほとんど初見状態です。

 そんな場合はひたすら休符を、緊張感をもって数えています。休符といっても、12 小節休みとか、繰り返し記号があるとか1かっこ、2かっこといった指示が並んでいるわけですが、その指示をひたすら追いかけます。音を出さないから休み、とかいう気分はまったくありません。常に緊張感が続いています。

 事情はプロのオーケストラでも同じだと思います。シンバルの担当者が全曲の中でただ1回だけ音を出すことになっているのに、そのタイミングを間違えて、ついに音を出さずじまいだったなんて話がありますが、本人は相当落ち込むと思います。

 そうならないためにも、休符はしっかり数えましょう。前の音出しが終わったらすぐに小節の頭を1と数え、以降2、3、4、1、2、3、それ という具合に頭の中で拍数を数えていきます。また、同時に足を踏んだり膝を屈伸させたりして音楽への乗りを持続させます。けっして、やれやれ休みだなんて思わないことです。

 多くの教室では本番演奏が年に2回程度あり、それに向けて新曲の練習に入っていくというサイクルがあると思われますが、結局半年もかけていろいろなパートの音出しを合わせる作業をやっているわけです。メンバーが休符をしっかり数える習慣がつけば、よりたくさんの曲を練習し、発表のサイクルを短くできると思います。そうすれば、教室の中にもトリオやカルテットのサブ・グループを作る余裕も生まれ、より高度な音楽集団へと変遷を遂げられると期待しています。

 さあ、もう一度、休符というものの見方を見つめ直して見ましょう。

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