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聞くことの大切さ


フレンドタウン18号(2003年6月)に掲載された記事です。


複音ハーモニカの独奏もいいですが,合奏もまたとても楽しいものです。

ハーモニカ合奏の編成は、教室によって色々違いがあると思いますが、ファースト、セカンド、バス、コードの4重奏、あるいはこれに低音のサードが加わった5重奏が多いでしょう。また、バス、コードの代わりにピアノで伴奏する教室もあります。

今回はメロディを担当するファースト、セカンドについて、グループ合奏における注意点について考えてみます。

独奏と違って合奏では全員が同じ気持ちにまとまらなければなりません。このときに大事なのが、自分の演奏だけに夢中にならないで、他の人の演奏を同時によく聞くということです。なにか当たり前のことのようですが、経験からすると実はこれがあまり守られていないようなのです。

一例では、数小節の休みがある場合の後の音出しです。ここでよく見られるのは、1小節速く飛び出したり、逆に1小節遅く出遅れたりすることです。これが起きる原因を常々考えているのですが、次のようなことかなと思います。休みの部分にくると、やれやれ休みだと一安心してしまう。実際には音楽は休みなく続いているのですから、小節はどんどん進んでいます。そこではっと気付き数え始めるのですが、一安心したために1小節休み終わったのか2小節休み終わったのか判らなくなります。そこで、えい、この辺だろうと吹き始めると本来の入りの場所とずれてしまう。

こんな現象は楽譜をもらってすぐのときには仕方のないことだと思うのですが、演奏会当日にも起きるので困ってしまいます。どう対処したらよいのでしょう。

ファーストやセカンドにはそれぞれの役割があります。自分のパートだけに夢中になって他のパートのことを気にしていないかもしれませんが、実際にはファーストがメロディをとって、セカンドが合いの手のようにオブリガートを吹いたり、またその逆の場合もあります。またサードやバス、あるいはピアノがメロディをとってファーストやセカンドがオブリガードを吹くといったこともあります。楽譜をもらって大体の音が把握できたら、今度は他のパートが何をやっているかを把握することが大切だと思います。別に他のパートの楽譜を見る必要はありません。他のパートや伴奏が何をやっているかをよく聞けばよいのです。そうすると、自分が休んでいる間、他のパートがこんなことをやっていて、その合いの手として自分のパートがここで入ってくるのだなということが判ってきます。そんな状態に早くなれれば、休みの小節数を一々数えなくても入れるようになりますし、曲の中での自分のパートの役割が判ってきますから、より合奏を楽しんで参加できるようになることでしょう。また、他のパートとハモっているのであれば、ハモリ自体を楽しむことができます。

別の現象として、音符が細かい場合のリズムの進行に気を配りたいものです。何故か初心者の方は音符が細かいととても速く吹かなくてはいけないではないかと思い込むようです。細かい音符を実際より速く吹こうとするものですから、益々吹けなくなります。また、それっとばかりに吹き始めるものですから、実際の小節よりも少し速く飛び出したりします。足でリズムを取っているのはとても結構なのですが、よく観察してみると、細かい音符があるところでは足の動きも速くなってしまうようなのです。

これを解決するにも、耳でよく聞くことをお奨めします。今度はバスやコードの進行あるいはピアノ伴奏に耳をすませるのです。自分の足の動きは、それらの規則的なリズム打ちに全く同期させておかなければなりません。音が細かいからといって、そこに夢中になりすぎないことです。バックのリズムどおりに足を動かしておけば、細かい音符も実はそれほど速く吹かなくてもいいことがわかってくるでしょう。よくお手本を聞かせると、なんだこんなゆっくりでいいのかと納得してもらえるのですが、耳をすませて音楽の進行に乗っていくことを心がけていれば、毎回お手本を聞かなくても吹けるようになることと思われます。

最後のポイントとして、rit. と a tempoを全員で合わせる方法です。人はついrit.やフェルマータの伸ばし以降の入り方を、指揮者に合わせなくてはと思いがちになります。ですから、誰が合図を出すのだっけと音楽の進行を離れてリーダを探したりします。結果的に、ばらばらの入りになってしまうことが多いのです。

しかし、音楽の流れには自然な流れがあります。指揮者も勝手にテンポを遅くしたり伸ばしの長さを決めているのではなく、この音楽の流れだとこの辺で入ればいいのだなというのを心で感じながら合図しているのです。ですから合奏のメンバーもその音楽の流れに乗っていけば、自然と指揮者と同じような感覚になれるのです。つまり、気持ちを切り替えて指揮者の合図を待つのではなく、指揮者と心を一つにして音楽に乗っていくのです。。その場合、目が楽譜を追っていても、ほんの目の片隅で誰かの動きが把握れば、全員が同じようなタイミングで次に入っていくことができるようになることでしょう。

 結論としては、自分の音を出すことだけに集中しない。音楽の流れに身をまかせ、音楽の進行自体を楽しむように心がけること。他のパートの動き、バックの伴奏の動きを常によく聞いておき、速度の変化には自然な変化を自分も感じ取るようにすることといったところでしょうか。さあ、みんなで合奏を楽しみましょう。

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