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愛犬ラビーの散歩

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口琴藝術No.147(1997年11月)に掲載

 我が家には、ラビーという名前のキャバリア種の座敷犬がいます。血統を保つための近親交配のためか、股関節炎であまり早く走れません。
 私のハーモニカの練習には、もっぱらラビーの散歩時間が当てられます。近所にはまだたんぼ道が残っていますので、散歩のついでにハーモニカをポケットに入れて出かけます。散歩時間は、土日の昼夜数回と平日の夜2回です。土日は、平服を着ているのがわかるらしく、朝から連れて行けとうるさいのです。平日は、背広を着ていると黙って送り出してくれますが、その代わり、帰りを待ち構えていて夕食後に1回、そのあと一眠りして、11時ごろにまた1回ねだります。遅く帰ってくると1回で済みますが、仕事で12時になろうと、演奏の打ち上げで酔っ払っていようとお構いなく、深夜に散歩に行かされるハメになります。
 そこで、あたりに人がいないときを見計らって、ハーモニカを取り出して吹き始めます。ラビーは早く走れないので、鎖を離してもそんなに遠く離れることはありませんが、時々夢中になっているとどこかへ行ってしまって、全然吠えない犬なので、探すのに一苦労します。散々探して戻ってくると、玄関で待っていたりすることもあって憎めないのですが。
 練習は、主にビブラートと音階です。
 横隔膜ビブラートを習得したいきさつは12月のフレンドタウン誌に載るはずですが、クロード・ガーデン氏に教わったものです。しかし、習っただけでは到底、氏のように華麗なビブラートが出せるはずがありません。3連符のビブラートはすぐできるようになりましたが、4連符ができません。ラビーと歩きながらダメだダメだとやっているうちに、少しずつ少しずつ早さが増してきました。なんとか4連符になってきたのは、2年も経ってからでしょうか。いまでも不安定で、やり続けていないと元に戻ってしまいます。
 最初は500円の安物10穴ダイアトニック・ハーモニカをポケットに入れていました。「アンニローリ」が4連符でビブラートがかかったときは、大変感激したものです。しかし、私はクロマチック・ハーモニカが専門ですから、ダイアトニックとは微妙に感覚が違います。あるとき、それに気付いて10穴のクロマチック・ハーモニカに変えました。10穴ですと手にすっぽり収まり、散歩にとても具合がいいです。しかし、吹き続けるうちに、10穴と16穴の違いが気になってきました。10穴は木製ボディですが、16穴はプラスティック・ボディです。
 両者の間には、あきらかな音色の違い、息のひっかかり具合、半音レバーの感覚など差があります。散歩で微妙なニュアンスがうまくビブラートで表現できたなと思っても、トリオの練習や本番の演奏で16穴で同じことが中々表現できません。現在は、本当は散歩に16穴を持って行くべきだなと思いつつ、その大きさゆえに、悩みながらまだ10穴を持って出かけます。
 ビブラートの早さが出ても、まだガーデン氏の音色とは差があります。ビブラートの山の大きさをなだらかにしたり、吹く息の強さを変えてみたりと毎夜の散歩が苦になりません。また、アドラー氏のビブラート、ヘイマン氏のもの、日本の名人達のもの、皆それぞれに違いがあります。口の形を変えたり、舌を使ったり、喉を加えたりと試行錯誤は続きます。
 複音ハーモニカでも、横隔膜ビブラートはガラリと音色を変えてくれます。先日、フレンドタウン演奏会の打ち上げで、複音で斎藤先生のピアノ伴奏でベースなしで演歌を吹いたところ、中々好評でした。複音が専門の方も、ぜひ横隔膜ビブラートを試してみてください。一味違った音色をものにできると思います。
 音階練習は、学生の頃から大切さはわかっていたものの、実践が伴わなかったものです。実践しようにもあまりに難しかったので、すぐおざなりになってしまっていたものです。あるときから、散歩中に音階練習を始めました。ガーデン氏が今でもホテルで時差ボケ解消にずっと音階練習をやっていると斎藤先生から聞いたのがきっかけだったように思います。
 楽譜を見ないで、といっても、深夜の散歩中ですから当然ですが、C調から始めてC調まで一通り練習しようとします。回り方に色々あって、C、F、Bb、Ebとフラットを増やす方法、C、C#、D、Ebと半音づつ上がる方法、逆にシャープを増やす方法、セブンス音階、マイナー音階などいろいろな音階で試す方法などがあります。
 長音階だけでも、最初は3種類程度で散歩が終わってしまう位、私には難しいものでした。今では、長音階だけなら十数分で1回りできるようになりました。しかし、短音階となると、自然的、和声的、旋律的など3種類あって、頭がゴッチャになってしまいます。まして、ペンタトニック、ブルース、ディミニッシュ、オーギュメントなどなどいくらでも練習すべき音階はあるらしいので、消化不良を起こしています。散歩の種は尽きまじです。ラビーちゃん。
 応用として、簡単な曲、「ふるさと」でも「赤とんぼ」でもよいのですが、これを12の調で吹くこともやっています。いまだに、必ずどれかの調で音を間違えます。先日、FIHのコンテストのアトラクションで、徳永先生が「シェルブールの雨傘」を12の調でアドリブ演奏されたのを聞き、ため息が出ています。
 音階を練習するようになって、クロマチックでは#系よりb系の方がやさしいという持論が崩れてきました。よく音階練習がしてあれば、その差はどんどん縮まるようです。#系は、#が1つか2つのときが1番難しいようです。通常そのような編曲が多いので、つい、#が難しいと思い込んだようです。スティービーワンダーがやたらと#の多い曲をよく演奏していますが、たくさん付いている方が楽なようです。
 また、C調の音階を早く吹くのは、決して楽なことではないこともわかりました。吹き吸いを均等に、急速に吹くには相当の訓練が必要です。もちろん、他の調を早く吹くのはもっと難しいのですが、実用上、C調の演奏がかなり多いので、アドリブ的に音階のグリッサンドを入れると効果的なのです。
 HARMONICA REVIEW誌で池田先生が音階練習の大切さを何度も説いておられますが、音階をやっていくと、曲の演奏でミスが減るというのです。確かに、ある曲を一生懸命聯執しても、中々本番でミスをなくすことはできませんが、音階を始めてからは、随分楽になってきました。余裕が出てきたように思います。
 D調の曲(#2つ)は以前から嫌いで、吹き吸いが手のスライドと一致しなくて悩んだものです。厚木方面の女性達が簡単に吹いているのを見て、若さというのは凄いものだと感心していたのですが、音階練習を始めてみて50歳を超えた私でも少しは同期が取れるようになってきました。人間、歳を取っても進歩はするのだなと自分を見直しています。
 元々、音階練習はアドリブをやりたいというのが強い動機だったのですが、それには年齢の壁、あるいは本来の才能の欠如かもしれませんが大きな壁を感じています。もっと20台の頃から始めれば進歩したのかもしれません。厚木の若い女性が即興でセカンド・パートを付けるのを目にしたり、7歳(当時)の太郎君がクロマチックでアドリブをやるのを見ると、ラビーとあと5年散歩を続けても及ばないかなとも思っています。しかし、今夜もラビーは散歩に誘います。今度はJAZZのアドリブでよく使われるというII-V7-Iの進行を散歩のメニューに加えようと心に誓っているこの頃です。
 犬や猫は、ハーモニカの音を嫌うと聞いたことが何度もあります。ラビーは別に嫌いません。1度、ハミングバードの練習を我が家でやったことがありますが、ラビーは側にきて大きな鼾をかいて昼寝をしてしまいました。これもビブラートの効いた、心地良い音色だからに違いないと自負しています。


P.S.
私の不注意により、13才の老犬となったラビーは、2002年2月27日、いつものように散歩中に車にはねられ、帰らぬ犬となりました。長い長い間、一緒にハーモニカの練習に寄り添ってくれたラビー、本当にありがとう、またごめんなさい。

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